第35回(平成23年) 飛騨文芸祭
<入賞作品集 飛騨文藝>
<飛騨文藝・序文紹介>
蒔かぬ種は生えぬ
(社)高山市文化協会長 小鳥 幸男
当協会が昭和四十四年第一回文芸祭を創設してより四十三年間、その対象を広く飛騨全域に拡大して
「飛騨文芸祭」とした昭和五十二年より早や三十五年の月日を閲した.この間常にその成果を「飛騨文
芸」の冊子に纏め、広く江湖の鑑賞に資し、文芸の普及に力めて来た。次第にその成果は表れ、この種市を区域とする文芸祭のレベルとしては極めて高いものを示し、見方によっては.県単位で主催される
同種の内容より高い位置に在るかと思われた。
そんな経緯を踏まえての今年土の応募作品ば突然変異的な内容の飛躍を見ることが出来た。その端的
な表れが長編物の応幕数の伸びが挙げられる。文芸を測るに必ずしも文宇の量を以てする愚は、今さら
謂うまでもないが、その質において優に各種文芸賞の境地に在るかとさえ思われる。
ここに特筆すべきば、高校生以下を対象とする「青竜賞」部門の充実は、将来の高山市の文化を支えて行くべき新しい力が芽生えたに外ならない。
当協会創立以来.常に心して来て、こつこつと蒔き続けた種が、ここに来て慈雨に遭った如く一面に湧き出でた。「蒔かぬ種ば生えぬ」の謂を地で行ったことを喜び、更に大きく成長し、来年は更にずばらしい芽生えを期待する。
受賞者一覧
文芸祭賞 | 現代詩 | 後藤 順 | 「水仙は帰らない」「いもうと」 |
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江夏美好賞 | 小説 | 大埜間 典子 | 「八月の七夕」 |
市長賞 | 小説 | 宮本 清則 | 「空っぽの幸せ」 |
〃 | 短歌 | 和田 操 | 病室の窓から見ゆる笠ヶ岳の 冠雪告げるかつての山男父に 他 |
市議会議長賞 | 俳句 | 清水 佳代子 | 六月は酸性の嘘で固める 他 |
〃 | 評論 | 坂口 比斗詩 | 「福田夕咲 詩形による一考察」 |
市教育委員長賞 | 戯曲 | 大塚 浩一 | 「流星号奇譚」 |
〃 | 随筆 | 橋渡 香織 | 「東山魁夷の天生、幽玄環境へのいざない」 |
市文化協会長賞 | 小説 | 野口 喜代男 | 「祖母とプリン」 |
〃 | 現代詩 | 山附 純一 |
「野鳥」 |
〃 | 現代詩 | 谷口 茂雄 | 「レンゲツヅジとバチリン」 |
〃 | 短歌 | 田口 千津子 | 瀬戸川は雨に濁りて鯉見えず 三株のきぼうし見下ろして佇つ 他 |
〃 | 短歌 | 栃原 よ志ゑ | 誰彼が瞼に浮かぶ敗戦忌 永らうる我忝きかな 他 |
〃 | 短歌 | 稲泉 真紀 | けざやかな帰化植物のにおい持つ おとこに逢いし夜のしずけさ 他 |
〃 | 俳句 | 上田 眞穂子 | 夜濯の月に届きし水の音 他 |
〃 | 俳句 | 小林 高子 | 左義長の炎粉雪舞ひ上げぬ 他 |
〃 | 俳句 | 小県 孝子 | 筆あとの笑みて哀しき良寛忌 他 |
青竜大賞 | 小説 | 熊崎 菜穂 | 「ゆりかご~Lily's Cage~」 |
青竜準大賞 | 小説 | 錦野 史織 新井 天音 井戸 千菜美 黒内 香理 |
「あなたは冷たい」 |
青竜賞 | 小説 | 井戸 千菜美 |
「それは真に幸福を呼ぶか。」 |
〃 | 現代詩 | 黒内 香理 | 「NOTHINGNESS」 |
〃 | 現代詩 | 日下部 友香 | 「箱庭の空」 |
〃 | 現代詩 | 小島 春菜 | 「満月」 |
〃 | 短歌 | 林 良孝 | 庭の木に僕は昔に登ってた この木も僕の家族なのかな 他 |
〃 | 短歌 | 川上 まなみ | カーテンのふくらむ夏の教室で 恋の終わりを話してゐたり 他 |
〃 | 俳句 | 上垣 佳可 | 憂し放課揺る手の大き団扇かな 他 |
〃 | 俳句 | 中林 靜花 | 太陽の雫受け止め夏蜜柑 他 |
〃 | 俳句 | 小瀬 裕季奈 | うぐいすの鳴き声聞いてだんご食う 他 |
受賞作品
受賞作品の詳細については、(社)高山市文化協会までお問合せ下さい。