第33回(平成21年) 飛騨文芸祭
<入賞作品集 飛騨文藝>
<飛騨文藝・序文紹介>
文芸は地域文化の物差し
(社)高山市文化協会会長 小鳥 幸男
一概に言えないが、その地域の文化性の高さは、文芸の質をもって測ることができると思う。その点、今年の飛騨文芸祭の応募作品、とりわけ入賞作品は、この種の他の催しに比して遜色がないと思われる。
文芸に限らず芸術に類するものは、突然に、澎湃として沸き起こることは、稀有の天才の出現でもない限り、永年積み重ねられた研鑽努力の精華に外ならない。殊に一地域の文化性を問うには、一層そのことが言える。
高山市文化協会主催の飛騨文芸は多少の形を変えつつも既に半世紀の歴史を閲している。俗に継続は力なりと言われる如く、この時間が、飛騨の文芸、延いては高山市の文化の向上に寄与した功績ははかりしれない。
この地方の小都市で、この種の催しで、今回の入賞作品の質の高さは、かかる経緯を経た上の賜物と市民挙って誇りとすべきものと思う。
発刊によせて
高山市長 土野 守
第33回飛騨文芸祭入賞作品集「飛騨文藝」が刊行されますことを心よりお祝い申し上げます。
また、この度、日頃の地道な活動が実を結び、受賞されました皆様、誠におめでとうございます。
今年も、市内外より意欲的な作品が数多く応募され、その約3分の1が高校生からの応募であったとお聞きし、若者の活字離れが進んでいると言われる現代において、大変喜ばしく思っております。
本市出身の青春ミステリー作家・米澤穂信さんも、中学生時代から小説を書き始め、大学卒業後、高山市内で書店に勤めながら執筆活動をされていました。
平成13年にデビューされた米澤さんは、その後、宝島社の「このミステリーがすごい!」のベスト10に名を連ね、その名が世に轟くほどのご活躍をされています。
この郷土の新たな誇りは、飛騨地域における若い世代の執筆活動に大きな勇気と力を与えてくれることでしょう。
青少年の部に応募された皆さんも、筆を休めることなく常に前進し続け、飛騨地域の文芸土壌をより豊かなものにしてくれることを願っております。
おわりに、主催の(社)高山市文化協会のご尽力に深甚の敬意と感謝を申し上げ、お祝いの言葉とさせていただきます。
<受賞者一覧>
文芸祭賞 | 小説 | 上小屋 旭 | きんこうたい 「琴高臺」 |
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江夏美好賞 | - | - | |
市長賞 | 小説 | 野口 喜代男 | 「輪廻転生の滝」 |
〃 | 随筆 | 新田 忠一 | 「ああ、飛騨高山 -ここに住み慣れて-」 |
市議会議長賞 | 俳句 | 斉藤 真砂子 | 風立ちて旅の終わりのソーダ水 他 |
〃 | 短歌 | 尾崎 珠子 | あの白きサルスベリを前に立つ家が 私の住居二十年目の 他 |
市教育委員長賞 | 随筆 | 橋渡 香織 | 「飛騨高山 城山愛記 2008、ヒノキに想う ~インタープリターからの提言~」 |
〃 | 児童文学 | 青山 英彦 | 「花の首かざり」 |
市文化協会長賞 | 俳句 | 小県 孝子 | コツと割る黄身盛り上がるお元日 他 |
〃 | 俳句 | 中島 源兆 | へくそかずら楽しき花と覚えけり 他 |
〃 | 俳句 | 山下 守 | 春めくや息吹きかけて受領印 他 |
〃 | 短歌 | 和田 操 | 客の来ぬ事務所にボスが六法を 読みてゐるなり遠雷の鳴る 他 |
〃 | 短歌 | 小林 伸子 | 作風の変はりし友の「アップリケ」 パリまで運びぬ個展に向けて 他 |
〃 | 短歌 | 南 文子 | 格子戸を開くれば鈴の音がせり 小暗き奥に祖母一人住みて 他 |
〃 | 随筆 | 松井 嶋子 | 「城山にもあった赤牛の池」 |
〃 | 小説 | 青山 英彦 | 「遠慮 -泣くな真之介-」 |
〃 | 現代詩 | 後藤 順 | 「桐ダンス」 |
〃 | 現代詩 | 下田 勝也 | 「天使のいたずら」 |
青竜大賞 | 俳句 | 森下 桃妃 | 絵ハガキの中に詰まりし夏休み 他 |
青竜賞 | 俳句 | 久保田 元 | 夏の空雲間に見えたあの笑顔 他 |
〃 | 短歌 | 神田 詩織 | 砂時計を逆様にしてもう一度 遣り直したい十七の夏 他 |
〃 | 短歌 | 安江 有可 | 曇り空近づいてくる雨の音 かわいた道は斑に染まり 他 |
〃 | 現代詩 | 日下部 友香 | 「逃げ水」 |
受賞作品
受賞作品の詳細については、(社)高山市文化協会までお問合せ下さい。