第29回(平成17年) 飛騨文芸祭
<入賞作品集 飛騨文藝>
<飛騨文藝・序文紹介>
ごあいさつ
高山市教育長 森瀬 一幸
第29回飛騨文芸祭入賞作品集「飛騨文藝」が発行できましたことを、応募者の皆様、並びにご協力いただきました関係各位に、衷心よりお礼申し上げます。
今回も、飛騨地域をはじめ、全国の飛騨出身者の皆様から、79点もの作品が応募されましたことは、活字離れが危惧されている昨今において、大変頼もしく思います。
過日、古川町でご生誕ののち、幼少期を高山で過ごされました作家、早船ちよさんが他界されました。
代表作「キューポラのある街」をはじめ未来を切り開く青春像を描いた小説や、童話など幅広い執筆活動をされた早船さんのご活躍ぶりは、同郷の私どもにとっても大きな誇りであり励みでありましただけに、言い難い喪失感を抱いております。
しかしながら、明治近代以降に中央文壇で活躍されました瀧井孝作、江馬修など郷土出身の文学者以降、連綿と続いてきた本市の文学的風土が、本年2月1日に10市町村が合併し新しい高山市が誕生したことにより、次代に向けてさらに醸成することを切に期待しております。
最後に、ご共催いただきました社団法人高山市文化協会のご尽力に厚くお礼申し上げ、あいさつといたします。
文化こそ飛騨は一つ
(社)高山市文化協会長 小鳥 幸男
今年で29回を数える飛騨文芸祭は、実は近年行なわれた市町村合併の先駆的な役割を果たしていたと思う。
当初“高山市文芸祭”と呼んで、対象を高山市に限っていたものを、大野郡、吉城郡、益田郡に範囲を広げて飛騨一本にしようと考え関係市町村会に働きかけた。
その結果は各郡の対応に落差があった。
今考えれば、こうした行政の組織に頼ろうとしたこちらの考えが甘かったと悟る。
たった一本の町村長賞を得たい為にどれだけの足を運び、頭を下げたのか。
賞の有り無しに関係なく、飛騨全土に広げようと腹を決めるまでに時間は余り必要でなかった。
結果は、行政区域の枠を超えた応募があり一応の安堵をした。
文化活動というものに対する当時の自治体の長達の思考の貧困さを今更上げつらってみても仕方が無い。
時代は当協会が初め、目ざした飛騨は一つの方向に確実に向いている。
文化に垣根がないように、文芸に垣根があろうはずがない。
この垣根を一つはずし、乗り越えて行くのが自由を求める文化の力なのではなかろうか。
過ぎ去った時間を振り返り、進んで来た道の間違いでなかったことを密かに安堵している。
<受賞者一覧>
文芸祭賞 | 戯曲 | 山腰 武司 | 「寝者袈裟村異聞」(一幕五場) |
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江夏美好賞 | - | - | |
市長賞 | 俳句 | 澤木 正子 | ため息は無色透明春の虹 他 |
〃 | 小説 | 下畑 七三 | 「さくら」 |
市議会議長賞 | 俳句 | 中島 源兆 | 穂の出でて芒の風となりにけり 他 |
〃 | 短歌 | 尾崎 珠子 | それぞれの外出予定カレンダーに 印して嫁との同居始まる 他 |
市教育委員長賞 | 小説 | 大下 宣子 | 「かきくけこ」 |
〃 | 短歌 | 和田 操 | 「遠方に友もてば世を広く感ず」 ソローの言あり娘はセネガルへ行く 他 |
市文化協会長賞 | 随筆 | 上小家 旭 | 「父の宿題」 |
〃 | 俳句 | 清水 玉代 | 初御空国旗とびとび山の街 他 |
〃 | 俳句 | 山下 守 | 老ゆること老いて知りけり寒雀 他 |
〃 | 俳句 | 垣内 静子 | 白秋の風のすき間ににほいかな 他 |
〃 | 短歌 | 西野 紘子 | 後れ毛を湯にたゆたはせて仰ぎ見る 花びらの如き北国の雪を 他 |
青竜大賞 | 戯曲 | 橋本 雅 | 「あなたの雨の中で」 |
青竜賞 | 現代詩 | 小笠原 幸 | 「草原の彼方」 |
〃 | 俳句 | 今川 聖也 | 見おろせば銀河のごとき飛騨の街 他 |
〃 | 俳句 | 長尾 俊宣 | 屋根の上花火もかてぬ星の粒 他 |
受賞作品
受賞作品の詳細については、(社)高山市文化協会までお問合せ下さい。