瀧井孝作碑
碑文
「無限抱擁」
説明
碑面は、瀧井孝作直筆の『無限抱擁』の六朝風四文字が刻まれ、碑背に黒色花崗岩の説明板が嵌め込まれている。
文学散歩道の文学碑第一号の碑である。昭和49年(1974)3月、現地を調査し直ちに着工した。碑背には、昭和49年11月、高山市文化協会建設とあるが、実際の据え付けは、瀧井孝作の誕生日の4月4日に行い、昭和50年(1975)瀧井孝作の来高を機に、碑の除幕式が行なわれた。
『無限抱擁』は、信一と松子という若い二人の、ひたむきで、はかない愛の物語である。心境小説そして虚飾も感傷もない捨て身の作家態度と言われた。始めは『夢幻抱擁』と考えられたものを改めたという。
創作態度を芭蕉の幻住庵の記に託し、「瞬間々々に消滅する幻影に似たものをしっかり描き止め・・・・・」と語っている。
人物
【瀧井孝作(たきいこうさく)】
明治27年(1894)4月4日生~昭和59年(1984)11月21日没
小説家・文化功労者。高山町空町(現大門町)生まれで東京都八王子市に居住。号は折柴。
河東碧梧桐に師事し俳句の道に入った。大正8年(1919)時事新報記者になり、このころから芥川竜之介、志賀直哉らの知遇を得て文筆活動が旺盛となり『飛騨高山』などの短篇小説や随筆を次々に発表。昭和2年(1927)代表作『無限抱擁』発表。『野趣』で読売文学賞(昭和43(1968))。『俳人仲間』で日本文学大賞(昭和49(1974))。
作品は「瀧井文学」と評され、トツトツとした中にも独特の味わいを持つ。昭和10年(1935)の芥川賞創設から56年(1981)まで選考委員を務めた。俳句を生涯の友とし『瀧井孝作全句集』などがある。高山の観光ポスターに用いる「飛騨高山」の文字など六朝風の書法でも知られる。
日本芸術院会員(昭和34(1959))。高山市名誉市民(昭和46(1971))。文化功労者(昭和49(1974))。勲二等瑞宝章(昭和50(1975))。八王子市名誉市民(昭和50(1975))。